【日曜メッセージ】 「 心にクリスマス 」

Date:2021.12.12

「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身になりますように。」

(ルカ福音書1章38節)

 「お言葉どおり、この身に成りますように」の英語訳はLet it be to me according to your word.(RSV)。婚約期間中に神の御子が宿るとの天使の言葉に困惑するマリアが神様に祈った言葉でした。ビートルズ解散直前の最後のアルバムがこの言葉なのです。悲観するポール・マッカートニーの心に、昔、母が自分のために祈った聖書のLet it beの言葉が甦り、歌となりました。Xmasの正確な日時は分かりませんが「御心のままに」と祈る心にはいつでもXmasの祝された出来事が起こりましょう。

80年前の今日はゼロ戦部隊の真珠湾攻撃で太平洋戦争が始まった日です。ハワイは7日㈰朝のアドベント礼拝直前でした。360機の隊長が「トラトラトラ」の渕田美津雄さん。軍艦ミズリー号の降服調印式に連合艦隊参謀として立ち会い、その5年後キリスト教に出会い洗礼を受け伝道者となります。何がそうさせたのでしょう。

それは元・日本軍捕虜から聞いた収容所で献身的奉仕をする一人の米国のお嬢さんの話でした。「なぜ日本人捕虜に奉仕するのか」と聞くと「両親が日本軍によって殺されたから」と。彼女の両親は宣教師としてフィリピンで伝道中、日本軍からスパイとして処刑されます。両親が死の直前に読んだ聖書と祈りを考えた時、突然、憎しみが愛へと変えられ、日本軍捕虜のために奉仕する決意に至ったと。それが心に残り、更に一人の米国人が配るパンフレットに日本人から捕虜の酷い扱いを受けた米国軍人のキリスト教入信の手記に、憎しみが隣人愛へ変えられる姿を読むのです。淵田さんは聖書を買い、ルカ23章の十字架のキリストの言葉に出会い、捕虜収容所で奉仕する女性の気持ちに至るのでした。「大粒の涙がポロポロと頬を伝い、その日、私はキリストを救い主として受け入れた」と。翌年、米国のキリスト教団体の招きに10ヶ月の旅をします。12月7日のアドベントの朝、戦艦アリゾナでの慰霊祭に殺されることを覚悟で出席します。その心を支えたのはマリアの「Let it be」だったでしょうか。けれどキリスト者となり謝罪に来た彼を人々は温かく迎えるのでした。クリスマスは人の心に聖なる勇気と優しさを与えます。十字架に架かるためお生まれになった飼い葉桶の幼子の姿がそうさせるのです。

 

( 日本基督教団 野幌教会牧師 福島 義人 )