「　必要なことはただ一つだけである。　」

（ルカによる福音書10章42節）

私たち現代人は大変忙しい日々を過ごしていると言えます。それは今の社会を生きていくためには仕方のないことなのかもしれません。

今日の聖書の箇所は、二人の姉妹、姉のマルタと妹のマリアという人の話です。イエス様と弟子たちは、教えを伝える旅の途中に、この二人の姉妹の家に迎え入れられます。マルタはイエス様のご一行をもてなすために気忙しく働いていました。しかし、妹のマリアはイエスの足元に座って話を聞き入っています。そのマリアの姿を見て、マルタは「妹に手伝ってくれるようにおっしゃってください。」とイエスに訴えます。この訴えは、私たちにとっては当然の訴えのように聞こえます。一生懸命に具体的な直面する課題に取り組むこと、行動することは良いことのように思えます。しかし、イエスの答えはこうです。「必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない。」意外な答えだなと思う人もいるのではないでしょうか。

イエス・キリストは、決してマルタの態度を全面的に否定したのではないと思います。しかし、本当に必要なことはただ一つだ、というのです。そして、その必要なこととは、イエス・キリストの教えに耳を傾けることなのです。

科学技術の粋を集めたものが、人の健康のために用いられる一方で、大量殺戮の兵器をつくるために用いられている現実を私たちは目の当たりにします。一生懸命努力した結果得られたものが、真に人々の幸せにつながるためには、まず生きていく方向、目的をしっかりと見定め、良い価値観を養うことが何よりも大切です。そのために、イエスの教えである聖書の言葉に傾聴することが最も必要なことなのです。

宗教部長　渡辺　淳