「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。　　　(ルカによる福音書19章５b～６節)

聖書はイエス様と出会った人々の愛の物語であります。イエス様と出会ったザアカイという人がいました。彼は徴税人の頭で、エリコの町の権力者であり、金持ちでしたが、人々からは嫌われていました。彼はローマ帝国のために自分の民族に対して悪いことをしていたからです。ある日ザアカイは、噂に聞くイエスが自分の町に来ると知り、どんな人か見ようとして出かけました。しかし、背の低いザアカイは、人垣のせいで見ることができません。恥ずかしいと思いながらも、先回りして木に登ったのでした。

そこを通りかかられたイエス様は、彼を見て、「ザアカイ、急いで降りて来なさい。」と声かけました。彼は急いで降りて来て、イエス様を家に迎え入れました。その出会いによって彼はイエス様の愛に触れ、自分が犯してきた罪を自覚して、その罪を告白し、イエス様の愛に応える生き方を約束しました。イエス様に救われた喜びを味わったからでしょう。

彼は人生の方向転換を経験したのであります。それまで彼は人々に嫌われても、お金が自分を支えてくれると信じて財産をためて来ました。しかし、その財産を貧しい人々に施す者に変えられ、だましたものは返す者に変えられました。彼は物の世界から愛の世界へ、自分だけの孤独な生活から共に生きる生活へと変えられたということです。

自分がザアカイの立場ならば？イエス様の愛の声にどのように応じるのでしょうか。私たちにイエス様の愛の声は聞こえているでしょうか。その愛の声は、他人を、自然を、私たちの置かれている環境を通して、「急いで降りて来なさい」と、私たちに向けても言われている、そんな気がしませんか。考えてみましょう。

(酪農学園宗教主事　朴　美愛)