【日曜メッセージ】「 この時のためにこそ 」

Date:2021.07.04

「この時にあたってあなたが口を閉ざしているなら、ユダヤ人の解放と救済は他のところから起こり、あなた自身と父の家は滅ぼされるにちがいない。この時のためにこそ、あなたは王妃の位にまで達したのではないか。」

(エステル記4章14節)

 

「エステル記」はエステルという女性に関する物語ですが、「神」や「主」という単語が全く出てきません。登場人物も信仰深いわけではありません。そんな物語が聖書に含まれているのは、エステル記に書かれた出来事そのものが神様の計画だったからだと言われています。

舞台は紀元前5世紀のアケメネス朝ペルシア。エステルは養父モルデカイと暮らしていましたが、その美しさが認められ、アハシュエロス王(クセルクセス1世)の妃に選ばれました。ユダヤ人に対する逆風を避けるため、エステルはモルデカイの指示に従い、自分がユダヤ人であることを隠して、王宮で生活していました。

しかし、ある頃から王は側近ハマンを重用し始めました。王の命令により、人々は重鎮ハマンに対してひれ伏しましたが、ユダヤ人であるモルデカイだけはひれ伏しませんでした。神様だけを礼拝するべきだという信仰を持っていたからです。このモルデカイの態度が気に入らないハマンは、「王の命令に従わない民族であるユダヤ人を滅ぼす」ように王に進言し、王はその通りにユダヤ人撲滅の命令を下してしまいます。

ユダヤ人の行く末を嘆くモルデカイは、王妃のエステルに王への説得を依頼します。その時にモルデカイが言ったのが今週の聖句です。許可なく王の面前に出ることは禁じられていましたが、モルデカイの言葉に促されたエステルは意を決して3日間の断食の後、アハシュエロス王にハマンの悪だくみを告発します。王は、エステルの言葉によってユダヤ人を助ける新しい命令を出し、ハマンを処刑しました。

人生には「なぜ今こんな目に遭うのか」わからないことがよくありますが、エステル記は、一つ一つの出来事が絶妙なタイミングで用意されたものだということを教えてくれます。あとは、私たちがその時、勇気を持って与えられた役割を果たすかどうかです。終わりに旧約聖書コヘレトの言葉3章11節の言葉を読みます。

「神のなされることは皆その時にかなって美しい。」

 (英語科 池田 淳郎)