【日曜メッセージ】 「 歯磨き 」

Date:2021.10.31

「およそ鍛錬というものは、当座は喜ばしいものではなく、悲しいものと思われるのですが、後になるとそれで鍛え上げられた人々に、義という平和に満ちた実を結ばせるのです。」 

 (へブライ人への手紙12章11節 )

 

今日は、歯磨きで知られたライオン株式会社の創立者、小林富次郎さん(1852-1910)について話します。その人生の転機は36歳のキリスト教の洗礼を受けてからでした。三年後に事業は失敗、自暴自棄になり自殺しようとしますが、牧師が葉書に記した聖書の言葉が、それを踏み止まらせます。それが今日の聖書です。

当時の文語訳は「…されど後これに由りて練習する者に、義の平安なる果を結ばしむ」とあります。そして、小林富次郎は、これは神が与えた特別の練習、もう一度やろうと思うのでした。心がすさむ大変な時、聖書は必要な慰め励ましの言葉を用意されます。

どん底で聖書に捕らえられ、人生を再チャレンジする人が沢山います。ギデオン協会の関係者も事業をするからこそ似た経験があり、身銭を切って世界中のホテルや旅館に聖書を置くのです。ライオン歯磨きの創始者の小林富次郎さんもそんな体験の持ち主でした。彼はその後、東京で再び事業を始め、海老名弾正牧師の教会に出席し、そこで海老名牧師から、米国の歯磨き粉や製造方法を知り、それを事業として始めるのでした。

2年後に「獅子印ライオン歯磨」の誕生です。事業は軌道に乗り今日に至ります。その後彼は生死の境に至る病を経験し、それからは孤児院など慈善事業の働きも支えるのでした。人々から「そろばんを抱いた宗教者」と言われて愛されました。敵を作るのでなく良き仲間を作ってゆく。人を罪に定めるのでなく、良き人にして共に歩んで行く。聖書の言葉がそうさせるのです。61歳で胆石で亡くなりますが、その葬儀参列者は道に1㎞に及んだと言われます。人を愛したからこそ沢山の人に愛され沢山の影響を与えたのです。

この学園の創立者である黒澤酉蔵先生も、足尾銅山鉱毒事件で農民救済の運動中に、官憲により逮捕・投獄され、6ヵ月間拘留されます。後に無罪となりますが、この獄中での聖書との出会いが、その後の人生に大きな影響を与えました。やがて「北海道開拓の父」「日本酪農の父」と呼ばれるにいたります。

皆さんも、そんな人を生かす聖書の言葉に触れてほしいのです。

 

( 野幌教会牧師 福島 義人 )