【日曜メッセージ】 「 毎日が地獄? 」

Date:2021.11.28

「旅人をもてなすことを忘れてはいけません。そうすることで、ある人たちは、気づかずに天使たちをもてなしました。」          

(へブライ人への手紙13章2節)

 

互いの関係がこじれ、慰め励ましあう家庭が裁きの場となれば「毎日が地獄」です。けれども、その言葉に「毎日が地獄です。別府地獄めぐり」とユーモラスな宣伝にして別府の地獄温泉を日本有数の温泉街にした人がクリスチャン事業家の油屋熊八さんでした。彼の生涯の関心事は、「どうすればみんなが幸せになれるのか」でした。温泉マークを別府温泉のシンボルマークとして愛用したり、日本初の観光バスもバスガイドも彼のアイデアでした。これらは寂れた別府を笑顔溢れる日本一の温泉街にするためでした。富士山の頂上に「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」と刻んだ石碑を立て、来日した世界の要人を交通不便な別府に呼び寄せます。彼も若い頃は大酒を飲み、米相場で巨万の富を得たり破産したりの生活をします。すべてを失った後、人生をやり直すために35歳で渡米。そこでギャングによって殺されそうになった彼は、クリスチャンに救われ、洗礼を受け、生涯その志を支えた聖書「旅人をねんごろにせよ」の言葉に出会うのです。

温泉街で朝から夜遅くまで働く人々の子どもたちが喜ぶように、水上飛行機をチャーターし、お菓子を満載して集まった子どもに配るのです。親も観光客も大喜び。油屋熊八さんは、社員だけではなくその家族ことも思いにとめていたのです。彼の心にはいつも、「旅人をねんごろにせよ」との聖書の言葉が刻まれていました。

「日本一の借金王」と豪語し、人々からは「私たちの街のため尽力された熊八さんのためなら給与などもらえなくてもかまわない」と言わせた人でした。晩年は旅館もバス会社もみな人手に渡り、全てを失います。自分のためではなく皆が幸せになるために生きたからです。別府駅前に立つ油屋熊八さんの像は満面の笑顔にマントの裾には地獄の小鬼が楽しそうに掴まり遊ぶユーモラスな像です。台座には「子どもが好きなピカピカおじさん」と共に「旅人をねんごろにせよ」の聖句が刻まれます。今日は地獄の小鬼まで楽しくさせるクリスチャン油屋熊八さんが生涯を大切にした聖句を覚えたいのです。

( 日本基督教団 野幌教会牧師 福島 義人 )