【日曜メッセージ】「 人生の転機 」≪開校記念礼拝≫
Date:2024.05.12
「 人生の転機 」 ~酪農開拓を夢見て~
「空の鳥をよく見なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。」
(マタイによる福音書6章26節)
開校記念日を迎えたこと、おめでとうございます。
高校3年の夏、私の人生を変える出来事がありました。私は静岡出身ですが、親元を離れて山形の小さな高等学校(キリスト教学校)で学びました。鉄道駅から8キロも山の中に在り、バスも自動車も走らない山道を、荷物を担ぎ歩いて学校までたどり着きました。
とわの森三愛高校は、「神を愛し、人を愛し、土を愛す」という3つの愛による三愛精神を人生の指針とし、教育の柱にしていますね。私の卒業した基督教独立学園も同じ様に3つの精神を大事にしています。「読むべきは聖書、学ぶべきは天然、成すべきは労働」です。
高校3年生の夏、修学旅行で北海道へ行く事になりました。当時、北海道で思い浮かぶのは熊の出そうな原始林と開拓農家でした。1957年(昭和32年)のことです。厚岸郡浜中村西円朱別の獣医さんに1週間働きたいと手紙を出し、開拓農家に分散して、朝から晩まで大鎌を振るって草刈りをしました。一日が終わる夕暮れ時、荒漠とした原野の地平線に、かすかに見える雄阿寒岳と雌阿寒岳を見て、異国に居るような気持ちになりました。仕事はつらかったけれど、やり遂げた達成感、充実感がありました。
進路指導の時、東京の大学へ行くのをやめ、酪農学園の門をくぐりました。私にとって高校時代や酪農学園大学で出会った友達や先生方は、60数年の間、大きな支えとなり、行く先々で道を開いてくれました。父が私の農場を訪れた時、「求、祈ってやりなさい、祈ってやったことは失敗してもそれは成功だよ。神様がき っと道を開いてくださる。」と言っていたことが今も胸に残ります。
失敗の連続でしたが、必ず次の道が用意され、「空の鳥を見なさい、野の花を見なさい」、「明日の事まで思い悩むな、その日の苦労はその日だけで充分である。」 この言葉に救われ、 励まされてきました。そして、全てを神様に預け、祈って事をなす日々が今も続いています。
(本学同窓生・酪農家・元本校農業科教諭 西川 求)